①の記事では農薬製造工場と埋設農薬による汚染事例を紹介しましたが、今回は農用地とその他の事例を紹介します。
農用地
農薬の長期的挙動を見るために2000年代に秋田や新潟で行われた調査では以下のような結果が得られています。なお、OCPsとは有機塩素系農薬のことです。
HCHsは、1980年代前半に採取した試料おいては、N.D.~380ng/g、平均63 ng/g(n=21)、2000年代前半に採取した試料においては、N.D.~72ng/g、平均6.1 ng/g(n=21)であった。両年代ともに比較的多くの地点から検出されたが、21地点中17地点で濃度が減少し、平均濃度は1980年代前半から2000年代前半にかけて約1/10に大きく減少した。
『水田土壌における残留性有機汚染物質(POPs)の長期的消長⁻秋田県米川流域を例として⁻』小林淳、酒井美月、梶原秀夫、高橋敏雄(2008)
過去に使用されていたOCPsについて、そのほとんどは使用時から現在にかけて対象地域から消失していたものの、その堆積の経年変化から、水田に使用されたOCPsの下流域における残留が確認された。
『大規模水田地域の下流水域におけるOCPsの残留特性と長期挙動』酒井美月、高橋敏雄、清家伸康、大谷卓(2010)
農産物の残留農薬については厚労省によって調査が行われていますが、農用地に関する調査はほとんど行われておらず、現状の汚染詳細は不明です。
その他
これまでの事例は自主的な調査によって汚染が確認されたケースです。以下のように工事によって偶然発覚するケースもあります。
神奈川農政事務所旧平塚庁舎敷地に接する部分の市道において、下水道工事の際に土壌汚染(BHC)が確認され、平塚市がこの事実を公表しました。その後、神奈川県及び平塚市の指導を受け、庁舎敷地の土壌汚染調査を実施したところ、敷地の一部区域の土壌からBHC及びシアン化合物が検出されました。
関東農政局Webサイト
同じようなケースで福岡県のB社の工場跡地は、隣接地の汚染が工事によって判明した結果、工場跡地でも調査が行われました。この隣接地でBHCの調査が行われたのは住民の方から要望があったためといわれています。工場跡地の調査では埋設農薬の推定箇所の他に住民の方から要請があった箇所の調査が行われ、要請があった箇所でもBHCの指針値超過が確認されました。