国による処理方法の開発
POPs廃農薬の処理方法に関して農林水産省では2000年度、環境省では2001年度から実証試験が行われました。その結果、焼却処理を含め8つの処理方法が示されましたが、いずれも高コストかつ高環境負荷な技術でした。そのため、低コストかつ低環境負荷な処理方法の研究が行われています。
化学的分解
化学的分解に関しては、アセトン水溶液や酸性溶媒の中でマグネシウムなどの金属粉末の添加する方法やチタンを触媒にする方法などが開発されてきました。その後、貴金属を触媒にする方法は高コストであるため、安価な鉄粉を用いる方法が開発されました。現在は鉄粉などを細かく粉砕し、ナノ粒子化したものが開発されています。しかしながら、これらの処理方法は汚染土壌を懸濁させる必要があるものや懸濁させた方が効果的なものであるため、汚染水の処理が必要といった問題があります。乾式で行える薬剤も開発されていますが、実用化には至っていません。
生物学的分解
生物的分解に関する研究動向は、次のように移り変わっていきました。 1973年にγ-BHCなどの有機塩素系農薬の連続投与が与える環境への影響を調査するため、東京大学の農学部構内に農薬長期連用畑圃場が設置されました。その圃場のγ-BHCの消失速度が徐々に早まっていったことから微生物分解であることが予想され、以降、1989年に分解菌が特定されるまで、微生物の特定と分離や生態解明が研究の主となりました。その後はバイオレメディエーションへ応用させるため、野外での実証実験や接種菌と土着菌の挙動の違いなどについて研究が行われました。また、BHCの分解遺伝子群の解明も行われました。現在はBHCが環境中に放出され70年しか経過していないにも関わらず、多くの微生物がBHC分解能を獲得していることが注目され、ゲノム情報の解析などその分解能獲得の過程について研究が行われています。その他にもγ-BHCの分解遺伝子を植物に導入し、植物に分解させる研究も行われています。