科学研究費助成事業として東北大学の井上氏らがハクサンハタザオを用いて坑廃水中のカドミウムと亜鉛の浄化試験を行いました。坑廃水は、ヒョウタンゴケの研究事例で少し触れたように様々な金属を含んだ汚染水です。
ハクサンハタザオはアブラナ科の多年草で国内に広く分布しています。カドミウムや亜鉛を蓄積する植物であることが判明しており、その量は地上部の乾燥重量あたり最大でカドミウムは0.2%、亜鉛は5%に上ります。これまで株式会社フジタや三菱マテリアル株式会社などによってファイトレメディエーションの試験が行われてきました。
この試験では、模擬汚染水や実坑廃水を用いてその吸収挙動の確認や浄化の実証試験が行われました。吸収の挙動については、はじめに用意した模擬汚染水もしくは実坑廃水のみで栽培が行われ、浄化の実証試験は実坑廃水を連続給水で栽培が行われました。
試験の結果、カドミウムの吸収について亜鉛濃度の影響は確認されていません。また、吸収されたカドミウムの約60%が根に残留していることが判明しました。浄化の実証試験では、36hr後までは濃度低下が大きく、以降は緩やかに低下していき102時間後にはその初期濃度(25、50、100μg/L)の50%程度になっています。
この結果を基に処理プラントを設計すると、廃水の流量を25L/min、水質濃度を0.091mg/Lとし、400m2・水深30㎝の処理槽を3段直列に設置して一槽あたりの滞留時間を80時間とすれば濃度が0.006g/Lになると試算されています。
文献名:高集積植物を用いた亜鉛・カドミウム含有坑廃水処理方法の開発
発表者:井上 千弘、菅原 一輝、宋 陽、北島 信行
公開日:2017年5月