ヒョウタンゴケの原糸体が鉛を高蓄積することは、理化学研究所の井藤賀氏らによって確認されていましたが、その蓄積場所や吸着能力が明らかになりました。
ヒョウタンゴケは、蘚類(せんるい)というコケ植物の一種で世界的に広く分布し、日本でも全土に分布しています。草花や樹木と異なり、維管束がないため全身で吸水を行うことが出来ます。原糸体とは、コケの本体である茎葉体ができるまでに形成される植物体です。その外見は、葉緑体を多く含んでいるため緑色であり、糸状のアオミドロに似ています。
今回の井藤賀氏らの研究では、鉛の他にアルミニウムやクロムといった他の元素の蓄積量を確認する実験や鉛を吸着した原糸体を様々なイオン強度の電解質水溶液に浸して影響を確認するような実験が行われました。実験の結果、ヒョウタンゴケの原糸体は乾燥重量あたり鉛を最大で約74%蓄積しており、その蓄積場所は細胞壁部分が大半を占めることが判明しました。また、吸着された鉛は海水のような溶液中でも脱着がほとんど認められないことも判明しました。
今回実験に用いられたコケは、一般的なファイトレメディエーションで使用される草花や樹木と違い、カラムに充填して使用が行えます。そのため、時間経過に従って草丈や樹高が伸びることもないため、場所の有効利用がしやすいと考えます。生産については無性的に分裂して殖えていく原糸体のため大量生産しやすいということなので今後の展開に注目したいと思います。
記事: https://www.riken.jp/press/2018/20180117_1/index.html (理化学研究所HP)
発表者:井藤賀 操、榊原 均
公開日:2018年1月