国内で土壌汚染対策法の指定区域になった要因の物質の上位3つは、鉛、フッ素、ヒ素です。鉛およびヒ素については、集積植物を用いた試験等が行われています。しかしながら、フッ素については、ツバキやチャといったツバキ科植物が集積植物であると判明しているものの、試験等はあまり行われておらず研究事例が少ないのが現状です。フッ素と植物に関する国内の研究が盛んだったのは、フッ素公害が問題となり植物への影響が調べられた1970年代頃だと思われます。
一般的な植物のフッ素含有量は数ppm程度であり、 フッ化物(特に大気経由の)がもたらす植物への影響は著しいことが判明しています。
一方でツバキやチャは、これまでの調査で最大で4000ppm(乾燥重量あたり)を葉に蓄積することが判明しています。なお、樹皮、幹や花びらの蓄積量は数ppm~100ppm程度です。ツバキやチャといったツバキ科植物がフッ素集積植物ということは、1950年代に九州大学のMatuura氏らが行った調査により判明しました。この調査では九州を中心に様々な場所の様々な植物についてフッ素含有量が調査されています。その後、京都府立大学の山田氏はツバキ科植物がアルミニウムの集積植物であることに着目し、ツバキ科植物はフッ素をアルミニウムとの錯体で吸収、蓄積するものと結論しています。
文献名:『Fluorine Content in Plants』『TheFuorineintheTea』※1
『ツバキ科植物のふっ素吸収に関する生物地球化学的研究』※2
発表者※1:Sinnosuke Matuura、Nobuhide Kokubu、Sakuro Wakimoto、Akito Koga
発表者※2:山田 秀和
公開日※1:1954年10月
公開日※2:1980年7月