経済産業省の委託でDOWAエコシステム株式会社が坑廃水処理に植物を活用するため、植物の選定から適用性の可能性を評価する試験を行いました。坑廃水とは、鉱山の地表に湧出する鉄やアルミニウムといった金属を含む汚染水です。地下空洞内湧水の排水坑口から流出や地表の鉱滓等を洗った水の湧出などにより周辺への汚染拡散が問題となっています。坑廃水の処理は半永久的に行う必要があり、鉱山会社や自治体には重い負担となっています。
ヒョウタンゴケの原糸体は天然のゼオライトと比較して鉛吸着速度は早く、その吸着量も非常に高い(予備試験では乾燥重量あたりで約300倍の差)ことや原糸体の98%は水分であり大幅な減容が可能であることなどから使用植物として選定されました。なお、これらの実験に用いられているのは、固液分離性に優れた変異株です。試験は、原糸体を充填したカラムを4槽直列につないだ装置に実坑廃水を通水する形で行われました。その結果、原糸体の鉛飽和濃度は3wt%と非常に高いことがわかりました。また、各槽の出口で鉛濃度を測定したところ、以下のような結果が得られ次のような結論を出しています。
通液の結果を図2に示す。図2の縦軸に示す出口濃度(処理水の鉛濃度)が排水基準である 0.1 mg/l を越えるタイミングが、横軸に示すBV20の間隔で推移する結果であった(図2 .1.2 の横軸の点線にて表示)。このことは、直列3槽の吸着槽を用いて、BV20毎に飽和した前段の原糸体を交換することで、鉛を安定的に浄化可能なことを意味する。
出典:『平成 2 9 年度 植物利用型坑廃水浄化技術等基礎調査事業』に係る報告書 DOWAエコシステム株式会社
現場適用への課題として、原糸体の供給手段、栽培環境、個別サイトでの変化確認や回収後の原糸体の処理方法などが挙げられています。
文献名:『平成 2 9 年度 植物利用型坑廃水浄化技術等基礎調査事業』に係る報告書
発表者:DOWAエコシステム株式会社
公開日:2017年3月