森林総合研究所と農業食品産業技術総合研究機構が微生物のBHC分解遺伝子をカボチャの根に移植し、γ-BHCを分解する植物を創出しました。
生物的分解の方法の一つとして植物を用いたファイトレメディエーションという方法があります。POPsの浄化についても研究がなされてきましたが、次のような課題点がありました。一つ目は、POPsは疎水性が高く根に強く吸着されてしまうこと、二つ目は植物にPOPsを効率よく分解する酵素が存在しないことです。そのため、植物がPOPsを吸収しても植物内に残存し、それの処分が必要になってしまいます。なお、土壌汚染対策法に指定されているVOCは、ポプラなどに吸収され分解されることが知られています。
今回の研究ではPOPsを葉茎に移行する能力が高いカボチャに注目し、カボチャの毛状根に微生物のγ-BHC分解遺伝子が導入されました。その後、カボチャの毛状根のみを培養地で維持し、1ppm濃度のγ-BHCを添加したところ1日でその約90%が分解されました。今後は分解生成物の分解やγ-BHC以外の異性体の分解を試みるそうです。また、分解遺伝子群を導入したカボチャを作製し、汚染土壌の能力検証や他のPOPs分解遺伝子の利用などが検討されています。
文献名:γ-ヘキサクロロシクロヘキサン(γ-HCH)分解遺伝子を導入したカボチャ毛状根の作出 実用的な残留性有機汚染物質(POPs)ファイトレメディエーション植物の創出に向けて
発表者:七里 吉彦、田部井 豊
公開日:2017年7月